3月19日に「KARTE for App」がローンチされ、様々なメディアに取り上げていただきましたが、今回はライターの方にご協力いただいて「KARTE for App」の開発ストーリをプロジェクトメンバーへインタビューしました。
目次
ビジネス×エンジニア2人で実現させた新規サービス「KARTE for App」開発ストーリー
[取材・文] 岡徳之、細谷元(Livit)
ウェブとリアルに境目のない体験をーー。
CXプラットフォーム「KARTE」を主力とし、”人”を基点としたコミュニケーションの実現によって新たな顧客体験創出を目指すプレイド。メンバーの創造力を信じ、Try&Errorによる学習によってスピーディに機能や新サービスを開発する組織風土を強みとして、新規事業にも取り組んでいる。
その1つが、アプリでのコミュニケーションを可能にする「KARTE for App」だ。
このほどリリースされたばかりだが、ベータ版での既存クライアントからの好評に加え、「ZOZOTOWN」や「クックパッド」が導入を決めるなど、すでに多方面から注目されるサービスとなっている。
このプロジェクトをけん引したのは、ビジネスサイドの棚橋寛文とエンジニアの中間亮彬。実はまだ社歴の浅い2人だが、プレイドの「自走カルチャー」のなかで、5か月というスピードで新サービスのローンチを実現したコンビである。
プレイドの中で大きなローンチに関わるのは、2人にとって今回が初めて。それでも、大きなサービスを任され、開発し、ローンチできた裏側には何があったのかーー。
開発過程のインタビューを通じて、プレイドの開発体制や社内のカルチャー、プレイドで働くやり甲斐などを紐解いていきたい。
開発チーム紹介
棚橋寛文
職種:プロジェクトリード
略歴:新卒で楽天株式会社へ入社。サービスの企画・ディレクションや新規事業の立ち上げを経験。その後ビズリーチにて新規事業の立ち上げにPMとして携わる。2017年2月プレイドへ参画。
中間亮彬
職種:エンジニア
略歴:ITベンチャー企業にてスマホアプリエンジニアとしてインターンに従事した後、在学中にフリーランスとして活動。卒業後、受託開発会社を創業。2017年10月プレイドへ参画。
入社間もない2人が新サービス創出の立役者に
– 棚橋さんと中間さん、お二人とも社歴は短いながらも、「KARTE for App」立ち上げの中心的役割を担われたとのこと。お二人はいつごろ入社され、それ以前はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
棚橋:
プレイドに入社したのは1年と少し前です。それまでは、楽天とビズリーチで企画やマーケティングを担当していました。グローバルで勝負できる新しいサービス・価値をつくっていくことに関心があり、新たな挑戦の場としてプレイドに入社しました。
中間:
僕が入社したのは2017年10月です。それまではフリーランスとして主に受託開発をしていました。スキルセットはAndroidなどモバイルアプリ寄り。プレイドに入社してすぐに「KARTE for App」の開発に携わることになりました。
-「KARTE for App」の詳細について伺う前に、「KARTE」というサービスのコンセプトについて、お二人がどのように捉えられているのか改めてお聞きしたいと思います。
棚橋:
ユーザー一人ひとりの行動をリアルタイムに理解して、適切なコミュニケーションをとれるプラットフォームです。
「KARTE」はこれまで、ウェブでの行動データをトラッキングしてユーザーへの理解を深めることを可能にしてきましたが、アプリまで広げることでさらに多くのデータを活用できるようになります。ユーザーの動機、ステータス、何が好きで、何が嫌いかーー理解に広がりが生まれるはずです。
中間:
つまり、ユーザーを数値やデータではなく、「人として」捉えようとしているんです。一人ひとりに注目してより「個」へのコミュニケーションを促進するところは、マーケティング・オートメーション、つまり自動化や効率化といった思想からは生まれない進化だと思います。
棚橋:
マーケターがユーザー一人ひとりの表情を見ているかのごとく、人としてコミュニケーションがとれるようにしたい。例えばリアルの店舗であれば表情を見て、お客さんの求めているものを察したり理解することができますよね。
それができないウェブでは、あらゆる行動データをお客さんに紐づけてデータから求めているものを理解することが重要になるはずです。
– ウェブ版「KARTE」の開発時からアプリに対応させるという話はあったのでしょうか。
棚橋:
僕が入社した1年前くらいから、すでにクライアント企業から「アプリでもできないか?」という声はいただいていました。
牧野(今回のプロジェクトにはアドバイザーとして参加。今回は牧野もインタビューに随時登場):
実は、3年前くらいからアプリへの要望はあったのですが、社内のリソース的なところでなかなか進められませんでした。アプリ開発を得意とする中間の入社がすごく大きかった。2017年8月から少しずつ動き始めていて、10月に中間が入ってくることがトリガーとなり、そこから本格的に開発していこうとなりました。
プロフィール
牧野祐己
職種:エンジニア
略歴:新卒から5年弱IBMソフトウェア開発研究所で研究開発業務に従事。2015年1月プレイドへ参画。
– 中間さん、棚橋さんというメンバーがそろったことでプロジェクトが動き始めたのですね。アプリへの要望では、具体的にどのような声が多かったのでしょうか。
棚橋:
ウェブ版「KARTE」では、ユーザーの行動をセグメント化してアクションすることを可能にするのですが、アプリでもユーザーに応じてコンテンツを出し分けたり、プッシュ通知を送ったりできないかという要望は多かったです。
そうした声を踏まえて開発を進めました。「KARTE for App」はウェブ版と同じようにわれわれの提供するSDKを組み込んでいただくと、データのトラッキングやアクションができるようになります。
人にデータを紐づけて一人ひとりを理解するというところはウェブ版と共通。ウェブとアプリのデータを横断的に紐づけて、ユーザーの行動を理解し、セグメントをつくることも可能で、そこからプッシュ通知を送ったりやポップアップを出したり、ユーザーにとって最適なコミュニケーションをとれるのが最大の強みとなります。
現状ではウェブとアプリ、それぞれの領域に特化したプロダクトを提供して、データを集めているプレーヤーは多くいますが、ウェブとアプリで分断されているデータを統合して紐づけ、リアルタイムに解析をしながらアクションまでつなげられるプロダクトはまだ他にはありません。インターネットでの体験をよりリアルの世界に近づける新しい挑戦にワクワクしています。
– 分断されてきたユーザーのデータを統合し、活用するというのは、「KARTE」を利用する企業やマーケターにとっても新たな試みではないでしょうか。
棚橋:
はい。現状多くの企業ではウェブ担当、アプリ担当など部署間・担当者間の隔たりがあり、マーケティング企画が「局所最適」になっています。ユーザーのことを全体として正しく理解しているのではなく、一部分だけを見て分析し、この人はこうだと決めつけてしまっているーー。
しかし、分断されたデータを統合していくと、一人ひとりをより立体的に理解できるようになり、直感的にさまざまな施策を打てるようになる。マーケター自身の創造力、企画力がフルに発揮されるようになるはずです。
「ユーザーー人ひとりに最適な体験をつくるために、組織は、マーケターー人ひとりはどうあるべきか」ということを考えてもらうきっかけになれたら、と。世の中のマーケティング自体を、本当の意味で顧客目線や顧客起点にしていくことも、自分たちの役割だと思っています。
– 中間さんに伺います。特許出願中でもある「KARTE for App」ですが、エンジニアの視点から見て、ユニークな点を教えてください。
中間:
既存のアプリだったり、マーケティング・オートメーションツールにもアプリ内メッセージの機能はありますが、限られた種類の形でしか出せません。アプリの全画面にポップアップを出して、その中で文字、画像、ボタンの数を変更できるくらいで、柔軟にユーザーにアピールすることは難しかった。
「KARTE for App」だと、HTML/CSS/JSを使って、アプリの画面上にポップアップなどを柔軟に表示できるようになります。Webで表示していたものもAndroid/iOSで同じように出せ、デバイスによる制限もなくなります。
これまでのマーケティング企画では、マーケターがiOSの仕組みを知らないと難しかったり、デバイス独自の制約を受けることがよくあり、マーケターではなくどちらかというと開発側の意向が優先されていました。
デバイスの制限がなくなることで、マーケターが自由に企画を発想し、ユーザーー人ひとりに最適なメッセージを自由に表示できるようになるところが新しく、それが特許出願中の1つの機能です。
もう一つ付け加えるなら、施策やアクションの実行スピードを高められる点も特徴的だと思います。
通常、たとえばiOSで表示を変更するとき、ビルドの後に申請・審査というプロセスがあるので、変更に1日以上かかってしまうのですが、「KARTE」は外側からコントロールして、コンテンツを出したり、取り下げたり、書き換えたりできるので、施策を思いついたときにすぐ実行できるようになるのです。
Try&Errorによる学習ループが圧倒的スピードを可能にする
– 今回の開発はかなり急ピッチだったということですが、どのようなスピード感で開発されたのでしょうか。
中間:
昨年10月に入社してすぐにアサインされ、開発をスタートしました。そのあとすぐにベータ版を数社に使っていただき、フィードバックを交えながら、改善していくという流れで、かなり速く進んだ印象はあります。
特許出願中の機能は他にない仕組みであるためそもそも実現可能かどうかを検証したり、実装後に見えてくる新しい可能性や制約も考慮しながら開発を進めないといけないのですが、棚橋がビジネスサイドであっても技術面を理解しようとしてくれるので、コミュニケーションがスムーズにとることができ、進めやすかったです。
棚橋:
ユーザー企業からのフィードバックは僕が受け、質問があればすぐに中間に聞くのですが、回答のスピード、精度が高く、クライアントからの質問にパッと回答できるのがよかったです。僕ももともとアプリ開発、企画サイドにいたこともあったので、その経験が技術部分の連携に生かせたと思います。
牧野:
棚橋はプロダクトマネジャーやディレクター的立場での知見・知識があるだけでなく、マーケティングスキルもあって市場調査など1人でもしっかり分析して行動している印象です。前職の経験も生きている。
一方、中間は若いけど、技術に詳しく、自発的に取り組む、なかなかいないタイプ。Androidが得意で、iOSの経験は少なかったけど、自分で調べて開発をどんどん進めている。
プレイド自体が権限をしっかりメンバーに渡すことで自発的にTryしやすい、学習ループを回しやすい環境をつくっていますが、2人は完全にプレイド向きでどんどん自分たちで進めている。各々が自立自走しながら協調もしていて、いいコンビだと思います。
– 「自走」で働く環境ということですが、棚橋さんと中間さんはこれまで働いてきた環境と比べてどう感じているのでしょうか。
棚橋:
プレイドでは自分が「価値がある」と思ったことに突き進んでいける、それをやらせてもらえる環境があり、自分に合っていると感じます。
中間:
同感で、僕はもともとフリーランスという自由な立場で働いていましたが、今も自由度はそれほど変わっていないと感じます。
自分で考えて動くというのはフリーランスのときと同じですが、開発に関しては、これまでは受託開発でつくるものがすでに決まっている場合が多かった。自分がつくりたいものをつくれる今の環境はこれまでとはまったく異なります。
一方で、指示が降りてくるというような環境ではないので、自分でどうやってつくっていこうかと常に考えています。自分で考えて、考えたとおりに動けるというのが責任も大きいですが、やはりモチベーションになりますし、いいものができあがるんです。
– プレイドが「自走」カルチャーを実現している秘訣は何だと思いますか。
牧野:
自走カルチャーの前提として必要なのは、全員が目指す方向を共有できていることです。
棚橋:
それは必要ですね。主体性を持ったメンバーの集まりではあるけれど、一人ひとりが自分のやりたいことに向かってバラバラに動いているのではない。
中間:
まわりの仲間と協力しながら、自分1人だけではなし得なかった大きなバリューをつくりだせていることを実感しています。
– 最後に、「KARTE for App」を通じてお二人が今後やっていきたいことを伺いたいと思います。
中間:
ボップアップなどアプリ内でユーザー一人ひとりに適した形で話かける機能をさらに強化することや、クライアントから要望をいただいているインストール元チャネルに応じたコミュニケーションの最適化をできるようにするなど、やりたいことはいろいろあります。
棚橋:
同じく、やりたいことはすごくあります。異なる強みをもったプロダクトとデータ連携したり、モバイルというタッチポイントを活用して、これまでとれていなかった位置データや来店データを取得したりと。
オンライン、ウェブ、アプリだけでなく、ロケーション、店舗、もしかすると決済とかもあるかもしれない。モバイルはいろんなデータ取得のタッチポイントになるので、より深くユーザーを理解してコミュニケーションをとれるように挑戦していきたいと思います。
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